Mal Waldron <p>
 (C)Shigeru Uchiyama/Whisper not 
マル・ウォルドロン(1926.8.16~)

`60年代から`70年代の始めにかけてのジャズ界にはよほどドラッグがはびこっていたらしく、帝王マイルスを始めどいつもこいつも麻薬癖のために病院に担ぎ込まれたり、廃人になったり死んだりの大変な時代だったようだ。「バークリー音楽院で音楽理論ミッチリやりました。」「酒もタバコもやりません。」「ドラッグなんてとんでもない!」と言うウイントン・マルサリスに代表されるような超優等生的ジャズメンが特に若いのを中心にゴロゴロいる今日この頃の状況は立派なもんだが、ジャズ・クラブでの演奏中にも禁煙令を布告するミュージシャンが最近増えてきたのはドーカと思います。酒とタバコとジャズってのは、切っても切れない三種の神器ではありませんか。「いや、酒とタバコとジャズと女じゃ!」とぬかすオゾネ・マコトに代表されるようなのスケベなバークリー出も多いようですが・・・。


ぼくが一番に尊敬するジャズ・カメラマンのハーマン・レナードの作品にはモンクやパーカー、ビリー・ホリデイまで、タバコを持ってユラユラ立ちのぼる煙をまでも巧みに演出したすばらしいモノクロのシーンが数多く見られます。ハーマンと話した機会にタバコの話題に触れ、彼が師匠であったユーザフ・カーシュから学んだ大きな事は「手の表情を捉える」事だったと語り、彼自身演奏中のミュージシャンの手やブレイクの間に点けたタバコを持つ指先の表情を写す事をかなり意識していたと言う。立ちのぼる煙には一燈逆光を入れてたびたび演出したとも言っていた。


さて、前置きが長くなってしまったけど、この人マル・ウォルドロン、チェーン・スモーカーであります。思い出してみてください、この人のポートレイトでタバコを持っていないものを見たことが無いくらい。バークリーではなかったけれど、クイーンズ・カレッジで楽論を学んだ後ミンガスの常任ピアノとして、ビリー・ホリデイには彼女が亡くなるまでの伴奏者を務めた。数々のバンドのピアニストを歴任しながら一時はミュンヘンに渡ってヨーロッパでの活動を中心にしていたが近年はニューヨークとヨーロッパのみならず日本を含め世界中を飛び回っているらしい。飛び回っているのはそれはご活躍でイイのだけれど、今時の国際線航空機は例外なく100パーセント禁煙となっている今日この頃、タバコ中毒のこの人、飛行中には頭のテッペンから足のサキまで ニコチン・パッチを貼りまくって飛んでいるのだろうか?たいへん気になります。東京〜ニューヨークなど13時間もの禁煙を強いられることを思うと、それだけでビビってしまうぼくにぜひ長時間禁煙しても精神異常をきたさない極意をぜひお教えください。


 (C)Shigeru Uchiyama/Whisper not